「市川市の実家、千葉県だから23区よりは安く見られるはず」
そう思って動いてみたら、意外と高い査定が出てきた――そんな話を、市川市について耳にすることが増えました。
市川市は東京都江戸川区に隣接していて、千葉県の中ではもっとも東京寄りに位置する市のひとつです。そして、千葉県内の不動産価格水準で見ると、浦安市に次ぐ高値圏にあります。
ただ、この「すでに高い」というポジションが、市川市の不動産には独特の動きを生んでいます。今日はその構造を、一緒に整理してみたいと思います。
「千葉だから安く見られる」と思うのは早計
まず、最新の数字を見ておきます。
2026年1月1日時点の公示地価で、市川市全体の住宅地は前年比+3.02%の上昇でした。坪単価で見ると平均101.4万円。これは千葉県内ではトップクラスの水準で、浦安市に次ぐ千葉県2位のポジションです。
ただ、この数字の隣に、千葉県内の他の市の数字を並べてみると、面白い構造が見えてきます。船橋市の住宅地は前年比+4.65%、千葉市は+5.68%、八千代市・習志野市・松戸市など他の主要市も、市川市より高い上昇率を示しています。
つまり、市川市は千葉県内で価格水準が高い反面、上昇の伸びは穏やかという状態です。
これは「市川市の人気が落ちている」という意味ではありません。むしろ、すでに高値圏に達しているため、急激な伸びシロが少ない――そういう構造です。

グラフで見ると、千葉県内の他の主要市と比べて市川市の上昇率の控えめさがはっきり出ています。
23区の世田谷区や目黒区が10%超の伸びを見せている中で、市川市は3%程度。同じ「東京通勤圏」でも、すでに高値帯にいるエリアと、これから伸びるエリアでは、動き方が違ってくるわけです。
千葉県内で2番目に高い、市川市の高値圏ポジション
なぜ市川市は千葉県内で高値圏なのでしょうか。
理由は明快で、東京駅・大手町・日本橋へのアクセスがずば抜けて良いからです。
市川駅からJR総武快速線で東京駅まで約18分。本八幡駅から都営新宿線で都営線内のオフィス街まで直通。行徳・南行徳・妙典駅から東京メトロ東西線で大手町・日本橋まで直通。
沿線別の公示地価平均で見ると、都営新宿線沿線は1㎡あたり314.5万円、東西線沿線は240.3万円と、千葉県内とは思えないほどの水準になっています。一方、武蔵野線沿線は25.3万円。同じ市川市内でも、路線によって10倍以上の差があります。
知人から聞いた話で、市川駅徒歩5分の中古マンションを売却したご家族のケースがありました。最初は「千葉だから安いだろう」と思って一括査定を依頼したら、複数社から坪単価100万円近い査定が出てきて驚いた、とのことでした。「千葉県だから」という思い込みで、市川市の実勢を低く見てしまっていた――そんな話でした。
逆に言うと、武蔵野線沿線(市川大野など)の郊外エリアは、市川市内でも価格帯が大きく異なります。「市川市」という大括りで判断すると、実際の相場と大きくずれる可能性がある――この点が、まず押さえておきたいポイントです。
総武線沿いの高台(市川・本八幡)と、東西線沿いの埋立地(行徳・南行徳)
市川市の中で、まったく性格の違う2つのエリアが同居しているのが特徴です。
北部:JR総武線・都営新宿線沿い(市川駅・本八幡駅・菅野エリア)
下総台地の上にあるエリアで、地盤が比較的安定しています。菅野は「千葉の田園調布」とも呼ばれる住宅街で、市川市内で最高水準の地価を示しています。本八幡駅周辺の最高地点は㎡単価120万円ほどに達していて、千葉県内全体で見てもトップクラスです。
このエリアは戸建ての割合が高く、世代を超えて住み継がれてきた住宅も多くあります。古くからの住宅地としての落ち着きと、東京駅18分のアクセスが両立している点で、根強い人気があります。
南部:東京メトロ東西線沿い(行徳駅・南行徳駅・妙典駅)
旧行徳浜の埋立地・低地にあたるエリアで、海抜が低い地点が多くなります。ここはマンション需要が中心で、東西線で大手町・日本橋に直通できる利便性から、ファミリー層に人気があります。取引件数も市内で最も多く、行徳・南行徳・妙典の3駅で市内取引の大きな割合を占めます。
ただし、不動産関連のサイトで読んだのですが、東西線沿線の埋立地エリアは液状化や浸水リスクへの考慮が必要とされていて、購入前にハザードマップを確認する買い手が増えているそうです。これは江戸川区の状況と似た構造で、南北で買い手の確認ポイントが違うのが市川市の特徴です。
北部の武蔵野線沿いは「市川の郊外」というもう一つの顔
市川市にはもう一つ、忘れられがちなエリアがあります。**北部の武蔵野線沿い(市川大野・大野町エリア)**です。
公示地価データで見ると、武蔵野線沿線の市川大野は、市内最高地点(本八幡・八幡の㎡120万円)と比べると、㎡22万円ほどと6倍近くの差があります。
このエリアは「市川市」というブランドの恩恵を受けにくく、評価としては松戸市や柏市の郊外エリアと近い水準になっています。千葉県内の郊外型住宅地の評価軸の中にいる、と言ったほうが実態に近いかもしれません。
ネットの不動産解説記事で読んだのですが、市川市内で最も手が届きやすい価格帯のエリアとして、武蔵野線沿線が挙げられているそうです。「市川市」という名前から想像する相場感と、実態との差が一番大きいのがこのエリアかもしれません。
市川市の実家を売る前に確認しておきたいこと
ここまで整理してきたように、市川市の実家は「どのエリアにあるか」「どの路線か」「駅からどれくらいか」で、相場が大きく違います。
特に市川市のように、北部・南部・郊外で性格が違う地域では、町名と駅距離まで含めて相場を確認しておかないと、想定とのズレが生じやすくなります。
相場感の整理については、こちらの記事も参考になります。
相場だけ知っておきたい方へ
「売るかどうか」を、いま決める必要はありません。
ただ、自分の家や土地が、いまどれくらいの金額になりそうなのか。 ざっくりでも分かっていると、判断の土台ができます。
いくつかの不動産会社にまとめて査定を頼める、無料のサービスがあります。
- 売却を前提にしなくて大丈夫です
- 「まだ検討段階です」と伝えれば問題ありません
- 複数社の金額を比べると、極端な数字にも気づけます
知ったうえで、今は動かないという選択もできます。 そういう使い方をしている人も多いようです。
どの市川にあるか、まず確認する
「市川市の実家を売るかどうか」という大きな問いの前に、まずは自分の実家が市川市のどの位置にあるのかを、客観的な数字で確認するところから始めるのが、無理のない進め方だと思います。
総武線沿いの台地の戸建てなのか、東西線沿いの埋立地のマンションなのか、武蔵野線沿いの郊外住宅地なのか。
それぞれで取るべき戦略は違いますし、急ぐべきか待つべきかの判断も変わります。
数字を一度見ておく――そこから先は、どうしたいかを自分のペースで考えればよいと思います。
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