「事故物件なんて、誰も買わないんじゃないか」
事故物件を相続した方や、所有している方が、売却を考えるときに最初にぶつかる不安です。
実際、街を歩いていて「ここ事故物件で売られてたんですよ」と聞いたら、ほとんどの人は「自分は買わないな」と思うかもしれません。だからこそ、自分の物件についても「誰が買うんだろう」という疑問が浮かびます。
でも、実際の不動産取引の現場では、事故物件にも一定の買い手が存在しています。それも、極端に安い価格でなければ買わない人ばかりではなく、それぞれ違う動機を持った3つのタイプの買い手が動いています。
買い手の存在を知ることは、売却の不安を和らげる第一歩になります。今日はその構造を、一緒に整理してみたいと思います。
「誰も買わない」という不安は、売り手のほとんどが持つもの
まず、この不安は売り手の多くが共通して持つものだということをお伝えしておきたいと思います。
事故物件専門の業者やワケあり物件の買取サービスのサイトを読むと、相談者のほぼ全員が「うちの物件、誰が買うんでしょうか」と最初に聞いてくる、という記述があります。
つまり、ほとんどの売り手が同じ不安からスタートしているということです。
そして、その不安に対する答えは、業者の側から見ると意外なほどはっきりしています。事故物件の買い手は、ちゃんと存在する――これが現場で繰り返し言われていることです。
ただし、買い手のタイプは普通の中古住宅とは違います。動機も違えば、求める価格帯も違います。だからこそ、自分の物件にとっての現実的な買い手は誰かを知っておくことが、売却戦略の出発点になります。
買い手のタイプ1:投資家・賃貸事業者
事故物件の買い手として、最も実数が多いのが投資家・賃貸事業者です。
なぜ投資家が事故物件を買うのか。理由は単純で、取得価格が下がる分、賃貸収益の利回りが上がるからです。
具体的に考えてみます。
通常物件を3000万円で買って、月12万円で貸せば、年間利回りは約4.8%。一方、事故物件を1500万円で買って、月8万円で貸せば(賃料は通常より下がる前提)、年間利回りは約6.4%になります。
賃貸の場合、ガイドラインで特殊清掃が必要だった事案でも発生から3年経過すれば原則告知義務が消えるため、長期保有して告知義務が消えた後に通常賃貸に戻す戦略を取る投資家もいます。
ネットの不動産解説記事で読んだのですが、近年は「事故物件専用ポータルサイト」も登場していて、「相場より安いなら気にしない」という入居者層が一定数存在することが投資家の収益モデルを支えているそうです。
知人から聞いた話で、自殺があった築古マンションを売却したケースで、最終的に買ったのは賃貸事業を営む不動産投資家だった、というケースがありました。「告知期間が過ぎれば普通の賃貸物件として運用できる」という長期視点で買ってくれたとのことでした。
買い手のタイプ2:専門買取業者(再販目的)
次に多いのが、事故物件・ワケあり物件を専門に買い取っている不動産会社です。
専門買取業者のビジネスモデル:
- 事故物件を相場より安く買い取る
- 特殊清掃・リフォーム・場合によっては解体まで実施
- 心理的瑕疵を軽減した状態で再販、または更地として土地として売却
このタイプの買い手の特徴:
- 特殊清掃前の状態でも買い取ってくれることが多い
- 告知義務の判断・対応をプロが代行してくれる
- 短期間で現金化できる(最短1日〜数週間)
- 契約不適合責任を免除してくれることもある
その代わり、買取価格は仲介で個人買い手が見つかった場合より2〜3割低くなる傾向があります。
ただ、「相続でとにかく早く処分したい」「特殊清掃の費用負担が重い」「遠方で管理できない」といった事情がある場合は、価格より時間と手間の節約が優先されることがあります。
不動産関連の記事で読んだのですが、専門買取業者は「他の不動産会社で扱えないと言われた物件」を最後に引き受ける役割を担っているケースが多いそうです。普通の不動産会社では商売として成り立ちにくいニッチな領域を、専門業者が引き受けている構図です。
買い手のタイプ3:気にしない個人購入者
3番目のタイプは、**「事故物件であることをそれほど気にしない個人購入者」**です。
このタイプの存在は、売り手から見ると意外かもしれませんが、現実には一定数います。
具体的にどんな方々か:
気にしない宗教観・人生観の人:「人が亡くなるのは自然なこと」「家には罪はない」と考える方。年齢層を問わず、一定数存在します。
外国人購入者:日本独特の「事故物件忌避」の文化的背景を持たない方。特に欧米・南米・東南アジアの一部の国の方は、「価格が魅力的なら気にしない」と判断するケースがあります。
事故物件専門ポータルサイトで物件を探している方:「相場より安く家を持ちたい」という明確な動機で、最初から事故物件を視野に入れて探している方々。
立地が決め手になっている方:「どうしてもこのエリア・この駅・この学区がいい」という強い希望があり、事故物件であることを許容する方。
気にしない個人購入者の存在は立地が大きく影響します。利便性が高いエリアや、希少な立地条件の物件ほど、こうした購入者が見つかる可能性が高くなります。
ネットの体験談で読んだのですが、都心の駅徒歩圏内の事故物件マンションが、外国人購入者によって買われたケースがあったそうです。「気にしないし、価格も適正」と判断されて、想定よりスムーズに売却できた、とのことでした。
買い手の存在を知った上で動く前に
ここまで3つの買い手タイプを見てきました。
整理すると:
- 投資家:賃料下落を取得価格の安さで相殺する、収益重視の長期目線
- 専門買取業者:特殊清掃・告知対応・再販ノウハウを持つプロ
- 気にしない個人:宗教観・文化的背景・立地優先で判断する個別事情の買い手
自分の物件にとって現実的な買い手はどのタイプか――これを把握しておくと、売却戦略が見えてきます。
例えば、駅から遠い郊外の戸建てなら、個人買い手より投資家・専門業者が現実的かもしれません。逆に、都心の駅近マンションなら、気にしない個人購入者を仲介で時間をかけて探す価値があるかもしれません。
ただし、買い手のタイプを判断するには、それなりの不動産知識が必要です。自分の物件の立地・状態・告知内容を踏まえて、現実的な買い手層を絞り込むには、専門家の知見が役立ちます。
普通の不動産会社で断られた方へ
事故物件、孤独死、長く放置された家。 こうした事情のある不動産は、一般の不動産会社では「扱えない」と言われることがあります。
ただ、専門に対応している会社もあって、そういうところは事情を分かったうえで査定してくれます。
- 普通に売れない事情があっても、査定を受けられます
- 「家族の状況が複雑で…」という相談からでも問題ありません
- 専門業者なので、近所に話が広がる心配もありません
ひとりで抱え込む前に、まず聞いてみるのも手です。
売れない物件は、ほぼない
最後にお伝えしたいのは、「事故物件だから絶対に売れない」ということは、ほぼないという現実です。
価格を下げ続ければ、必ずどこかで買い手が現れます。専門業者を使えば、特殊清掃前でも現金化できます。立地が良ければ、気にしない個人買い手も見つかります。
つまり、問題は「売れるか売れないか」ではなく、「どんな価格で・どれくらいの期間で・どんな買い手に」売るか――この3つの組み合わせを選ぶことです。
事故物件を所有している不安は、「永遠に売れずに固定資産税だけ払い続ける」という最悪の想像から来ることが多いです。でも、その想像は現実とは違います。
買い手は存在します。それも、3タイプそれぞれ違う動機で。
そのことを知った上で、自分の物件にとってベストな売却戦略を選ぶ。それが、事故物件と向き合うときの現実的な姿勢だと思います。
ひとりで抱え込まないで、専門家に相談する選択肢もあります。
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