江戸川区の実家、ハザードマップが買い手の最初のチェック項目になった話

地域別|実家・不動産の話
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「江戸川区の実家、駅近だし買い手はすぐ見つかるはず」

そう思って動いてみたら、内見前に「ハザードマップを見せてください」と言われて戸惑った――そんな話を、近年の江戸川区について耳にすることが増えました。

江戸川区は東京23区の中でも、子育て支援や教育環境への評価が高く、住み心地で根強い人気のあるエリアです。一方で、地形的な特徴から、近年の異常気象や水害リスクへの関心の高まりとともに、買い手が物件を見る順番が変わってきている、という現実もあります。

これは江戸川区の不動産価値を否定する話ではありません。むしろ、実家の良さを伝えるためにも、リスク情報と向き合っておくことが、現代の売却では大事になっているという話です。今日はその構造を、一緒に整理してみたいと思います。

江戸川区の地価は、23区の中で取り残され始めている

まず、最新の数字を見ておきます。

2026年1月1日時点の公示地価で、江戸川区全体の住宅地は前年比+5.7%の上昇でした。これは上昇しているので悪い話ではありません。

ただ、東京23区全体で見ると、区部全域の変動率は+13.8%で、江戸川区はその半分以下にとどまっています。23区で住宅地の上昇率が低い順に並べると、葛飾区+5.6%に次いで江戸川区+5.7%が下から2番目です。

東京都が公表した令和8年地価公示の概要にも、その傾向が記載されています。区部1,551地点中ほぼ全地点で価格が上昇する中、江戸川区・葛飾区・練馬区は相対的に上昇幅が緩やかなエリアとして整理されています。

これは「江戸川区が下がっている」という話ではありません。他の区が大きく上がっている中で、江戸川区の伸びは控えめ――そういう構造です。

ただ、相続や売却を考えるご家族にとっては、「23区の他のエリアと同じくらい上がっているはず」と思って動くと、想定とのズレが生じやすい状況になっている、ということです。

買い手が物件確認の前にハザードマップを見る時代

ここ数年で、不動産取引の現場で大きく変わったのが、買い手のリスク確認の順番です。

以前は「立地・間取り・価格・築年数」を最初に確認するのが普通でした。ところが、2019年の台風19号や、各地で頻発するゲリラ豪雨・線状降水帯の発生を経て、買い手がハザードマップを早い段階で見るようになった――これが現代の流れです。

江戸川区については、2019年に区が公表した水害ハザードマップが大きな話題になりました。表紙に「ここにいてはダメです」というインパクトのある言葉が書かれていて、ニュースで取り上げられたことを覚えている方も多いと思います。

これは区民を脅かすためではなく、**「経験したことがない規模の水害が起きたときに命を守るための広域避難」**を呼びかけるものでした。区としても、住民の安全を最優先に考えた上での発信です。

それでも結果として、この表紙の影響で「江戸川区=水害リスクが高い」という認識が一般化し、不動産取引の場面でも、買い手が最初にハザードマップを確認する動きが定着しました。

2025年7月には水害ハザードマップ第2版が公表されていて、最新版を見ながら売却を検討する買い手も多いです。

西葛西と内陸住宅地で、評価が分かれる構造

江戸川区の中でも、地価の動きはエリアによって違います。

公示地価データで見ると、区内最高地点は西葛西6-15-2で1㎡あたり209万円。一方、区内最低地点は大杉4-20-4で28.6万円。同じ江戸川区内で約7倍の差があります。

駅圏ベースでも、西葛西駅周辺が79万円/㎡で最高一之江駅周辺が36.8万円/㎡で最低となっていて、上昇率も西葛西駅・平井駅周辺で目立つ伸びを示しています。

この差を生んでいる要因のひとつが、マンションと戸建ての需要差です。

ネットの不動産解説記事で読んだのですが、江戸川区では「土地・戸建てが得意な不動産会社」と「マンションが得意な不動産会社」がはっきり分かれているそうです。西葛西駅周辺はマンション需要が強く、内陸の戸建て住宅地は土地・戸建ての需要が中心で、それぞれ得意な会社も違うとのことでした。

つまり、自分の実家がマンションか戸建てか、そしてどのエリアにあるかで、適切な不動産会社も、相場感も違ってくるわけです。

「江戸川区だから」という大括りで動くと、得意分野の合わない会社に依頼してしまうリスクもあります。

千葉寄りエリアと総武線沿線、流動性の違い

江戸川区は東京23区の中で、千葉県との県境に位置しています。区内のエリアによって、性格がかなり違います。

総武線沿線(小岩・新小岩・平井):JRの幹線で都心アクセスが良く、商店街文化も健在のエリア。下町情緒があり、ファミリー層・シニア層に根強い人気があります。ただし木造家屋の集中度が高く、地震時の倒壊危険度・火災危険度は区内で相対的に高めとされています。

東西線沿線(西葛西・葛西):マンション集積エリアで、ディズニーランド・大手町・日本橋へのアクセスが評価されています。区内では地価が高めで、マンション売却の流動性も高いです。

京葉線・りんかい線沿線(葛西臨海公園・南葛西エリア):海寄りで、相対的に水害ハザードマップの影響を受けにくい区域もある一方、駅から距離があると流動性は落ちます。

都営新宿線沿線(一之江・瑞江・船堀):内陸の住宅地中心。地価は区内では低めですが、家族向けの落ち着いた住宅地として一定の需要があります。千葉寄りで、千葉県市川市・浦安市の取引と比較される場面もあります。

知人から聞いた話で、葛西の駅徒歩圏にある築古マンションを売却したご家族のケースがありました。買い手探しの際に、複数の購入希望者から「ハザードマップ上の浸水想定深さ」と「マンションの階数」を組み合わせて質問されたそうです。マンションの場合は3階以上であれば浸水リスクの説明がしやすいということもあって、最終的にはスムーズに売却できた、とのことでした。

江戸川区の実家を売る前に確認しておきたいこと

ここまで整理してきたように、江戸川区の実家を売るときは、**「立地」と「ハザードマップ上の位置」と「物件タイプ」**の3つを、買い手目線で整理しておく必要があります。

これは「江戸川区が不利だから」という話ではありません。むしろ、実家の状況を正確に伝えられれば、買い手の不安を解消して納得して買ってもらえる――そのための準備という意味合いです。

そして、その準備の出発点になるのが、いまの実家の客観的な市場評価です。

複数の不動産会社に査定を依頼すると、エリア特性・物件タイプ・ハザードマップ上の位置を踏まえた評価が出てきます。江戸川区での取引実績がある会社は、買い手のリスク確認にどう答えるかのノウハウも持っています。

相場感の整理については、こちらの記事も参考になります。

相場だけ知っておいた方がいい理由|実家を売る前の準備


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「売るかどうか」を、いま決める必要はありません。

ただ、自分の家や土地が、いまどれくらいの金額になりそうなのか。 ざっくりでも分かっていると、判断の土台ができます。

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リスクを知った上での売却戦略

「江戸川区の実家を売るかどうか」を考えるとき、リスクから目を背けるのではなく、リスクを正しく知った上で動く――これが、現代の不動産売却で大事になってきている姿勢だと思います。

ハザードマップ上のどの位置にあるか、浸水想定深さはどれくらいか、物件タイプ(マンション・戸建て)と階数はどうか――こうした情報を整理して買い手に提示できれば、価格の納得感も上がります。

逆に、これらを曖昧にしたまま売り出すと、買い手の側で勝手に「最悪のケース」を想定されてしまい、価格交渉で不利になることもあるそうです。

急いで決める必要はありません。でも、早めに情報を整理しておくことが、最終的に納得できる売却につながる――江戸川区については、この準備の手間が他エリアよりも少し多く必要になる、というのが現実です。

そして、それは「動けば必ず売れる」ということでもあります。江戸川区の住み心地の良さや、子育て・教育環境への評価は健在です。リスク情報と向き合って、正直に伝える――この姿勢があれば、適正な価格で買い手は見つかります。


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