「実家を売るかどうかはまだ決めていないけれど、目黒区だから資産価値は上がっているはず」
そう考えている方は多いと思います。実際、目黒区の地価はここ数年で大きく上がっていて、客観的に見ても恵まれた状況です。
ただ、地価が上がることにはもうひとつの顔があります。それが「相続税の負担も同じだけ上がっている」という事実です。
「売るかどうか」を考える前に、そもそも自分は持ち続けられるのか――その判断材料を、今日は一緒に整理してみたいと思います。
目黒区の地価は、ここ数年で別次元に動いている
まず最新の数字から確認します。
2026年1月1日時点の公示地価データで、目黒区全体の住宅地は前年比+13.66%の上昇となりました。坪単価で見ると平均464万円。商業地も含めた区全体の平均は坪単価608万円で、全国順位は9位という水準です。
特に上昇が目立つのは、自由が丘・青葉台・八雲・中目黒といった、もともと高級住宅地として知られているエリアです。自由が丘の公示地価は坪単価で1273万円を超えていて、目黒区内で最高値を示しています。
この上昇は、コロナ禍を経て富裕層の都心居住志向が強まったことや、低金利環境の長期化、海外マネーの流入など、いくつかの要因が重なって起きているとされています。
数字だけを見れば、目黒区の不動産は資産として上手くいっているように見えます。
ただ、ここで考えておきたい論点があります。
地価が上がる=相続税が上がる、という連動関係
不動産にかかる税金には、相続税という大きなものがあります。
相続税の計算で使われる「相続税評価額」は、土地については路線価(道路ごとに設定された土地の単価)で計算します。そして、この路線価は公示地価のおおむね8割になるよう設定されている、という関係があります。
つまり、公示地価が13%上がれば、路線価も連動して上がる――それは、相続税の計算ベースになる土地の評価額も同じだけ上がるということです。
具体的にイメージしてみます。
仮に、目黒区内に土地100㎡・公示地価相当の評価が坪500万円の戸建てがあったとします。土地だけで約1億5000万円の評価です。建物部分も含めると、相続税評価額は1億7000〜1億8000万円規模になることもあります。
相続税には基礎控除(誰にでも認められる非課税枠)があって、計算式は「3000万円+法定相続人数×600万円」です。配偶者と子ども2人なら4800万円。このラインを超えた部分が課税対象になります。
ここから先の計算は控除や特例を抜きに大まかに言うと、課税対象額が大きくなるほど税率も上がっていく仕組みで、最高税率は55%です。地価が上がるほど、相続税の負担が累進的に重くなる――これが、目黒区のような高地価エリアで起きている現実です。
「持ち続けたい」という気持ちと、「持ち続けられるか」という現実の間に、税金という壁が立ちはだかる構図です。
「持ち続けたい」と「持ち続けられる」は違う
ここで重要なのは、「相続税は払えるか」を考えることだと思います。
不動産が大きな資産であっても、それは現金ではないので、相続税を払うためには別途まとまった現金が必要です。預貯金が十分にあればよいですが、そうでない場合は不動産を売って税金を払うという選択を迫られることがあります。
不動産関連の本で読んだのですが、相続税の納付期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。この10ヶ月の間に、売却の意思決定・買い手探し・契約・決済まで完了させようとすると、買い手の側に**「急いで売りたい売り主」**だと足元を見られて、相場より安く売却せざるを得ないケースもあるそうです。
事前に動いておけば、こうした切迫した状況を避けられます。
知人から聞いた話で、目黒区の中目黒駅近くの戸建てを相続したご家族のケースがありました。地価が想定より高く、相続税の試算をしたら数千万円規模になった、とのことでした。結局、納税のためにその実家を売却することに決めたそうですが、「持ち続けたかったけれど、払いきれなかった」という言葉が印象に残りました。
「売るかどうか」を考える前に、そもそも相続したときに払いきれるかを考えておく――地価が上がっているエリアほど、この視点が必要だと感じます。
中目黒・自由が丘・青葉台で起きている共通の悩み
目黒区の高級住宅地で共通して聞くのは、**「広い土地を持っている家ほど悩みが深い」**という構造です。
理由は単純で、土地が広いほど評価額が大きくなり、相続税の負担も大きくなるからです。
公示地価データでも、自由が丘や青葉台の高地価エリアは1坪あたりの単価が高い分、同じ60坪の土地でも評価額の総額が変わってきます。坪単価500万円の土地60坪なら3億円、坪単価1200万円なら7億円超。後者の場合、相続税の試算は2億円を超えることもあり得ます。
「親の家だから残しておきたい」「思い出があるから手放せない」――感情的な気持ちは当然です。ただ、現実的には、実家をそのまま住み継ぐためには、別途まとまった納税資金が必要になります。
土地の一部を切り分けて売る(一部売却)、賃貸併用住宅に建て替えて収益化する、生前に贈与で分散しておくなど、選択肢自体はいくつかあります。ただ、どの選択肢を取るにしても、まずは現状の評価額を把握しておくことが出発点になります。
目黒区の実家を売る前に確認しておきたいこと
ここまで整理してきたように、目黒区の実家は「売るかどうか」よりも前に、**「持ち続けるとしたらどんなコストがかかるか」**を知っておく必要があります。
そして、そのコスト試算の出発点になるのが、いまの実家の市場評価額です。
公示地価や路線価は公的な指標ですが、実際の取引価格はそこから上下します。複数の不動産会社に査定を依頼すると、現実の取引で動く金額のレンジが見えてきて、相続税試算の精度も上がります。
相場感の整理については、こちらの記事も参考になります。
相場だけ知っておきたい方へ
「売るかどうか」を、いま決める必要はありません。
ただ、自分の家や土地が、いまどれくらいの金額になりそうなのか。 ざっくりでも分かっていると、判断の土台ができます。
いくつかの不動産会社にまとめて査定を頼める、無料のサービスがあります。
- 売却を前提にしなくて大丈夫です
- 「まだ検討段階です」と伝えれば問題ありません
- 複数社の金額を比べると、極端な数字にも気づけます
知ったうえで、今は動かないという選択もできます。 そういう使い方をしている人も多いようです。
急いで決める必要はないけれど、数字は早めに知っておく
「売るか売らないか」は、急いで決める必要はありません。
ただ、目黒区のような高地価エリアでは、「知らないまま時間が経つ」ことのリスクが他エリアより大きい――これは事実だと思います。地価が上がるほど相続税負担も上がっていきますし、判断材料を持たないまま相続のタイミングを迎えると、選択肢が狭まりやすくなります。
数字を一度見ておく。
そして、その数字を踏まえて、家族でゆっくり話し合う。
これが、目黒区の実家と長く向き合うための、無理のない第一歩だと思います。
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